OpenClawをVPSで運用する方法|オンプレ寄りで始める現実的な構成

OpenClawをオンプレミスで運用したいが、「自社にサーバー管理の人材がいない」「物理サーバーの初期投資が厳しい」という企業は少なくありません。そんなときに選択肢となるのがVPS(Virtual Private Server)運用です。

ただし、VPSは「クラウドの手軽さ」と「オンプレの管理負担」を併せ持つため、「楽に運用できる」わけではありません。本記事では、VPSでOpenClawを運用する手順と、セキュリティ設定・保守の現実・判断基準まで、落とし穴を含めて解説します。

VPS運用は「楽」ではない(よくある誤解)

VPSは「クラウドの便利さ」と「オンプレの自由度」の中間に位置しますが、多くの企業が以下のように誤解しています。

  • 誤解1: 「VPSならサーバー管理が不要」 → 実際: OS・ミドルウェア・セキュリティパッチの管理はすべて自社で行う
  • 誤解2: 「クラウドより安い」 → 実際: 保守・監視・バックアップまで含めると、構築代行と同等かそれ以上のコストになる
  • 誤解3: 「すぐに始められる」 → 実際: セキュリティ設定・ファイアウォール・ログ監視の構築に数週間かかる

VPSは「オンプレほどの設備投資なしに、オンプレ並みの管理負担を負う」選択肢です。これを理解した上で導入を検討してください。

重要: VPS運用は、「サーバー管理の知識があるが、物理サーバーを持ちたくない」企業に向いています。サーバー管理の経験がない場合は、構築代行サービスを推奨します。

VPS構成の例(最小構成)

OpenClawをVPSで運用する最小構成を示します。この構成は、社員数50名以下、試験運用から始める企業を想定しています。

推奨スペック

項目 推奨スペック 費用目安(月額)
CPU 4コア以上
メモリ 8GB以上(16GB推奨)
ストレージ SSD 100GB以上
OS Ubuntu Server 22.04 LTS
VPSサービス AWS Lightsail / DigitalOcean / Vultr / さくらVPS 3,000〜8,000円
バックアップストレージ S3 / Backblaze B2 / Object Storage 500〜2,000円

VPSの月額費用は3,000〜8,000円程度ですが、これに保守・監視・バックアップの人件費が加わります。月10時間の保守作業が必要と仮定すると、追加で5〜10万円の人件費がかかります。

初期セットアップ手順

VPS契約後、以下の手順でOpenClaw環境を構築します。

# 1. VPSにSSH接続 ssh root@your-vps-ip # 2. 一般ユーザーを作成(rootログイン禁止のため) adduser openclaw usermod -aG sudo openclaw # 3. SSHキー認証を設定(パスワード認証を無効化) mkdir -p /home/openclaw/.ssh cp /root/.ssh/authorized_keys /home/openclaw/.ssh/ chown -R openclaw:openclaw /home/openclaw/.ssh # 4. ファイアウォール設定(UFW) ufw default deny incoming ufw default allow outgoing ufw allow ssh ufw allow 443/tcp # HTTPS ufw enable # 5. 自動セキュリティ更新を有効化 apt install unattended-upgrades dpkg-reconfigure -plow unattended-upgrades # 6. Dockerインストール apt update apt install -y docker.io docker-compose systemctl enable docker # 7. OpenClawセットアップ git clone https://github.com/your-org/openclaw.git cd openclaw cp .env.example .env # .envを編集してAPIキー等を設定 # 8. コンテナ起動 docker-compose up -d # 9. SSL証明書取得(Let's Encrypt) apt install certbot python3-certbot-nginx certbot --nginx -d your-domain.com

この手順を完了すると、OpenClawがHTTPSでアクセス可能になります。ただし、これはあくまで「動く」だけです。セキュリティ設定・監視・バックアップは別途必要です。

セキュリティ(FW・SSH・監査ログ)

VPS運用で最も重要なのがセキュリティ設定です。以下の3点は必ず実施してください。

1. ファイアウォール(FW)設定

VPSは外部ネットワークに直接露出するため、ファイアウォールで不要なポートを閉じることが必須です。

# 許可するポート: SSH(22), HTTPS(443)のみ ufw status # 特定IPからのみSSHを許可(推奨) ufw delete allow ssh ufw allow from YOUR_OFFICE_IP to any port 22

社内IPアドレスが固定でない場合は、VPN経由でVPSに接続する構成を推奨します。

2. SSH強化

SSHはサーバー管理の入口です。以下の設定で攻撃リスクを下げます。

# /etc/ssh/sshd_config を編集 PermitRootLogin no # rootログイン禁止 PasswordAuthentication no # パスワード認証禁止 PubkeyAuthentication yes # 公開鍵認証のみ許可 Port 2222 # デフォルトポート(22)を変更 # 設定反映 systemctl restart sshd

3. 監査ログ

OpenClawの操作ログだけでなく、VPS自体のログも記録・監視する必要があります。

  • SSHログイン履歴: /var/log/auth.log を定期確認
  • ファイアウォールログ: 不正アクセス試行を検出
  • OpenClaw実行ログ: DB(PostgreSQL)に保存し、定期バックアップ
# SSHログイン失敗を検出(fail2ban導入) apt install fail2ban systemctl enable fail2ban # 設定: 5回失敗で10分間IPをブロック cat > /etc/fail2ban/jail.local << EOF [sshd] enabled = true maxretry = 5 bantime = 600 EOF systemctl restart fail2ban
事故例: ある企業では、VPSのSSHをデフォルト設定のまま運用し、ブルートフォース攻撃で侵入されました。OpenClawの設定ファイルが流出し、APIキーが悪用されて150万円の課金被害が発生しました。

更新・保守の現実(誰がやるのか)

VPS運用で最も見落とされるのが、継続的な保守作業です。以下の作業は定期的に発生します。

  • OSセキュリティパッチ: 月1回以上、脆弱性対応のアップデート
  • Dockerイメージ更新: OpenClaw本体や依存ライブラリのバージョンアップ
  • SSL証明書更新: Let's Encryptは3ヶ月ごとに更新(自動化推奨)
  • ログ監視: 週1回、不正アクセスやエラーログを確認
  • バックアップ確認: 月1回、バックアップから復元できるかテスト
  • 容量監視: ディスク使用率が80%を超えたらログ削除・ストレージ拡張

これらの作業を誰が担当するかを明確にしないと、「気づいたら半年間アップデートしていない」状態になります。

現実: VPS保守は月10〜20時間の作業が必要です。エンジニアの時給を5,000円と仮定すると、月5〜10万円の人件費が発生します。この費用を考慮すると、構築代行サービスと大差ない場合があります。

VPSか構築代行か——判断基準

VPS運用と構築代行サービス、どちらを選ぶべきか。以下の基準で判断してください。

VPS運用が向いている
  • 社内にサーバー管理の経験者がいる
  • 月10〜20時間の保守作業を割ける
  • 初期投資を抑えたい(物理サーバー不要)
  • スケールアップ・ダウンの柔軟性が欲しい
  • カスタマイズの自由度を重視する
構築代行が向いている
  • サーバー管理の経験者がいない
  • 保守作業に人的リソースを割けない
  • 承認フロー・権限設計まで含めて導入したい
  • トラブル時の対応を任せたい
  • 稟議を通す際、責任範囲を明確にしたい

特に、以下のケースでは構築代行を強く推奨します。

  • 法人で業務データを扱う(事故時の責任が重い)
  • セキュリティ・コンプライアンス要件が厳しい
  • 社内にサーバー管理の経験者がいない
判断のポイント: 「VPS月額5,000円 + 保守10時間(5万円)= 月55,000円」と「構築代行の月額保守15万円」を比較し、「保守作業を誰が担当するか」「トラブル時に対応できるか」を考慮して判断してください。

まとめ

OpenClawをVPSで運用することは可能ですが、「楽に運用できる」わけではありません。セキュリティ設定・保守作業・ログ監視など、継続的な管理負担が発生します。

VPS運用は、「サーバー管理の経験者がおり、月10〜20時間の保守作業を割ける企業」に向いています。それ以外の企業は、構築代行サービスの方が結果的にコストを抑えられる場合が多いです。

自社に最適な導入方法を判断するために、費用相場やオンプレ構成例も参考にしてください。詳しくは関連記事をご覧ください。

よくある質問

Q. どのVPSサービスが推奨ですか?

国内ではさくらVPS、ConoHa、Xserver VPSなどが実績があります。メモリ4GB以上のプランを選びましょう。海外ではDigitalOceanやLinodeも選択肢です。

Q. VPSのセキュリティ対策は何が必要ですか?

SSH鍵認証(パスワード認証の無効化)、ファイアウォール設定、自動セキュリティアップデートが最低限必要です。加えてFail2Banの導入も推奨します。

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