OpenClawを業務で導入する際、多くの企業が「動かすだけならすぐできる」と考えて着手し、思わぬところで躓きます。Dockerで動かすこと自体は難しくありませんが、環境差分・権限設定・依存関係の不整合が原因で、導入初日から数日間を無駄にするケースが後を絶ちません。
本記事では、2026年現在の最新環境を前提に、OpenClawをDockerで導入する手順と、詰まりやすいポイントTOP5を事前に把握できるよう解説します。法人で導入する際は、「動いた」だけでは不十分です。セキュリティ・ログ・承認フローまで含めた設計が必要である点も触れます。
OpenClaw導入で必要なもの(事前準備)
OpenClawをDockerで動かすために必要な環境は以下の通りです。
- Docker Desktop または Docker Engine(最新版推奨)
- Docker Compose(v2.0以降)
- Git(リポジトリのクローン用)
- エディタ(設定ファイル編集用。VS Codeなど)
- APIキー(Claude APIなど、利用するLLMプロバイダの認証情報)
Mac、Windows、Linuxで基本的な手順は共通ですが、環境差分によるトラブルは多発します。特にWindowsではパス区切り文字やファイル権限の扱いが異なるため、後述の「よくある環境差分」を必ず確認してください。
Dockerでの基本インストール手順
以下の手順で、OpenClawの基本環境を構築します。
この時点で正常に起動すれば、ブラウザで http://localhost:3000 にアクセスしてOpenClawの管理画面が表示されます。しかし、実際にはここで詰まるケースが非常に多いです。
よくある環境差分(Mac/Windows/Linux)
各OS環境で発生しやすい問題を整理します。
- Mac: ファイルシステムの大文字小文字を区別しない設定の場合、設定ファイル名のミスに気づきにくい。また、M1/M2チップではarmアーキテクチャ用のイメージが必要な場合がある。
- Windows: パス区切りが
\になるため、Dockerfileやシェルスクリプト内でのパス指定がエラーになる。WSL2環境を推奨。ファイル権限の概念がLinuxと異なるため、ボリュームマウント時に権限エラーが頻発。 - Linux: ユーザーIDとグループIDがホストとコンテナで一致しない場合、ボリューム内のファイルに書き込めない。Dockerfileで
USERディレクティブを適切に設定する必要がある。
導入で詰まるポイントTOP5
実際の導入現場で最も頻繁に発生する問題と、その解決策を紹介します。
ポート競合
OpenClawはデフォルトで3000番ポートを使用しますが、すでに他のアプリケーション(React開発サーバー、Rails、Nodejsアプリなど)が使用している場合、起動に失敗します。
法人環境では、複数のサービスが同じサーバーで稼働していることが多いため、ポートマッピングは最初に確認すべき項目です。
権限エラー
Linuxサーバーで最も多いトラブルです。コンテナ内のユーザーIDとホスト側のファイルオーナーIDが一致しない場合、ログファイルや設定ファイルの書き込みに失敗します。
特に本番環境では、rootユーザーでコンテナを動かさないことがセキュリティ上の鉄則です。開発時から権限設計を意識しましょう。
依存関係の不整合
OpenClawが依存するライブラリ(Pythonパッケージ、Node.jsモジュールなど)のバージョンが環境によって異なる場合、動作が不安定になります。
npm install ではなく npm ci を使用することで、lockファイルに記載された厳密なバージョンでインストールされます。これにより、「ローカルでは動くのに本番で動かない」問題を防げます。
API認証の設定ミス
APIキーの設定ミスは頻出します。特に以下のパターンが多発します。
- .envファイルにAPIキーを記載したが、docker-compose.ymlでenv_fileとして読み込んでいない
- APIキーに含まれる特殊文字(
=や$)がシェル変数として解釈されてしまう - 環境変数名のタイポ(
CLAUDE_API_KEYとCLAUDEAPI_KEYなど)
APIキーは機密情報なので、.envファイルは絶対にGitにコミットしないこと。.gitignoreに必ず追加しましょう。
ログ設定の初期値
OpenClawはデフォルトでログレベルが debug に設定されている場合があり、本番環境で大量のログが出力されてディスク容量を圧迫します。
法人運用では、ログは監査・トラブルシュートの重要な情報源です。適切なレベルでログを残し、容量管理を自動化しましょう。
法人運用なら「動いた」だけでは危険
ここまでの手順で、OpenClawは動くようになります。しかし、法人で業務利用する場合、「動いた」だけでは不十分です。以下の設計が欠けている場合、後で必ず事故が起きます。
- 承認フロー: AIが実行する操作を事前に人間が確認する仕組み
- 権限設計: どの操作を許可し、どの操作を禁止するか(最小権限の原則)
- 監査ログ: 誰が・いつ・何を実行したかを記録する仕組み
- バックアップ: データ・設定ファイルの定期バックアップ
- 障害対応: コンテナ停止時の復旧手順、エラー通知の仕組み
これらを後から追加するのは非常に困難です。導入初期から設計に組み込むことを強く推奨します。詳しくはセキュリティ設計ガイドを参照してください。
まとめ
OpenClawをDockerで導入する手順と、詰まりやすいポイントを解説しました。基本的な手順は単純ですが、環境差分・権限・依存関係・API認証・ログ設定の5点で問題が発生しやすいことを覚えておいてください。
また、法人で運用する場合は、「動いた」だけでは不十分です。承認フロー・権限設計・監査ログといった事故を防ぐ仕組みを最初から組み込む必要があります。
自社で設計・構築するリソースがない場合は、構築代行サービスの利用も検討しましょう。費用相場や選び方については費用相場ガイドで詳しく解説しています。
よくある質問
Q. OpenClawのDocker導入にはどの程度のスペックが必要ですか?
最低限メモリ4GB以上、ストレージ20GB以上が目安です。ただしモデルサイズやタスク数によっては8GB以上推奨です。
Q. Docker Composeの知識がなくても導入できますか?
公式のdocker-compose.ymlがあるため起動自体は可能ですが、ポート競合やボリューム設定のトラブルシューティングにはDockerの基礎知識が必要です。